ピラミッド内部とスフィンクスと、金をむしりたいガイドとの攻防 【エジプトとアラビア半島】 旅行記1日目上中編

ピラミッド内部とスフィンクス、エジプト考古博物館

1日目、エジプト旅行記の続きである。

ギザのピラミッドの位置関係も示しておく。

ファラオの密室

中には何もないぞ、としきりに言われたメンカウラー王のピラミッド内部へ、突入した。通気性が悪くなるためか、ムワッとした生暖かい空気が身を包み、少し怯んだ。

細く、狭い通路を奥へ、下へと降りていく。

細い通路は一方通行ではなく、入る人、出る人がすれ違いになっているため、人とすれ違うたびにツイスターゲームのように身をひねり、交わす必要がある。3つのうちで最も人気のないメンカウラー王のピラミッドではあるのだが、それでも狭い空間で何人もの観光客とすれ違った。

対向者が来るたびに、汗だくの顔に笑顔を張り付けながら体を折りたたんでやり過ごし、最後にもう一度渾身のトリプルアクセルを決めると、その先の小さな密室に降り立った。

そこそこ見ごたえのある空間があるではないか。

その小部屋は確かに空間だけがあり、物質的には何もないのだが、しかし4000年間王の寝室であったその雰囲気は漂っていた。石棺が置かれていたであろうスペースがあり、通路が続いている。その通路をさらに下に降りると、もう1ヶ所、小部屋があり、ピラミッドのスタッフが気怠そうにその入り口を守っていた。

どうやらこの小部屋が、見学できる最深部であるようだ。

この部屋に至るまでの通路には明かりを確保するために蛍光灯が設置され、煌々と光る照明がこの空間を照らしている。しかし、こうした明かりが無い時代、ピラミッドの奥は文字通り闇に閉ざされていたのだろう。

ふとそう考えると、何もないこの空間が4000年の過去とつながっているような気がした。そっと目を瞑り、ピラミッド最奥部の空気を肺に大きく吸い込むと、私は来た道を引き返すことにした。

上り坂となる帰り路の方がつらいはずなのだが、むさ暑いこの空間から出たいという欲が強かったためか、そこまで苦心せず地上に戻ってきた。

陽が高くなるにつれて続々と観光客が集まり、ギザの砂漠に人が溢れ始めた。

トラ・トラ・トラ

3つのピラミッド見学を終えて最後に来たのは、有名なスフィンクスのある場所だった。この場所は最もゲートに近く、徒歩でも訪れることができるため、一層人だかりができていた。

ぞくぞくと観光客が押し寄せてきていたが、私は波に乗り、すんなりと敷地内に入ることができた。

スフィンクスの手前には古代の建物の跡が残っている。

この遺跡はカフラー王時代のものと言われており、思い思いのポーズで写真を撮る人が多かった。私は遺跡の構造を確かめると、スフィンクスの方へ急いだ。

細い通路を登っていくと、いよいよスフィンクス見学エリアに出る。

あの有名なスフィンクスと感動の対面!なのだが、その見学エリアに広がる群衆に私は少し辟易した。

間近で見るスフィンクスは確かに感動ものだった。

しかしながら、“インスタ映え“の裏にはこの群衆がある。

ざわざわとした観光客の興奮の叫びは途切れることは無く、見学を終えた人が退場しては次々と新しい観光客がなだれ込んでくる。空間が開いたかと思うとすぐに次の観光客がその孔を埋めるように入ってくる。その濁流のような人の流れに嫌気がさし、私は人が少ない方、つまりスフィンクスの後ろ足部分へと移動した。

スフィンクスの後ろ足部分を見た私は、その厳しい前腕部と比較して随分可愛らしい後ろ足が気に入った。

猫科動物のように、にゃんと尻尾を体に巻き付けているではないか。

器用に体に巻き付けられたその尻尾は猫科のトラのように見えた。地面に足の裏をぺったりと付けた、伏せのポーズのような後ろ足も、狩りをする前のトラの様相であった。私が見ていたスフィンクスは、後方に移動するうち、いつの間にかかわいらしいトラになっていた。

哀れなるものたち

スフィンクスの見学エリアを出てピラミッドでの見学を終えた私は、ギザの街にすんなりと解放された。

わけではなかった。

世界三大ウザい国の本領はここから発揮されたのである。まずはガイドが先制パンチで甘めのジャブを発した。“ここまで見学して満足したのだから、チップを寄越せ。70ドルだ”という。もちろん私は“そんな金は無い”という。

太陽が真上に登り、灼熱の様相を呈するギザの砂漠の上で、2人の男と馬車に繋がれた馬が暑さに灼かれ対峙していた。先に根を上げたのは私の方だった。

わかった、楽しかったのは事実だから30ドル、それで終わりにしよう、と提案した。喉も乾いていたし、暑さで汗も吹き出たうえに砂漠の砂を被った私のシャツは悲惨なことになっていた。

それでも納得がいかないようでしばらく男も考え、粘っていた。しかし私はこれ以上払うお金を持ち合わせていない。私が、“欲しい額に足りない分は最初の店にいた男に請求してみろ”と言うと、男は渋い顔をして手綱を取り、砂の上で止まっていた馬車がようやく動き出した。

最初の店の前に戻ってくると、店の男とガイドの間でチップの分け前交渉が始まった。私は、“もう1ドルも出さん、勝手に奪い合ってくれ、哀れなものたちめ。”と心の中で吐き捨て、小さく別れを告げるとタクシーに乗り込んだ。

次に行動に出たのはタクシーの運転手であった。途中で“パピルスの博物館に連れていく”と言われ、私は“全く興味が無いから行かない”と断ったのだが、建物の前で車を停められてしまった。

それならばと入ったその建物はただのぼったくりお土産屋であった。他にも餌食となったであろう観光客が困った顔で壁一面の偽物パピルスを眺めていたが、私はノーマネーノーマネーとお経のように繰り返し唱えて悪しき客引きを降り払い、出された冷たいお茶を図々しくも豪快にしばくと店を出た。

車はしばらく進むとカイロ市内に戻ってきた。

再びナイル川を渡ると、次はカイロの世界遺産巡りになる。

時刻は昼過ぎになろうかというところで、まだまだ飛行機の時間には余裕があった。どこをどうやって巡るか全くのノープランだったので、私はエジプト考古学博物館で降ろしてもらうよう頼んだ。

こうしてギザでの戦いは幕を閉じたのであった。

歴史的価値の高い物ばかりが集まるエジプト考古学博物館。

昼のカイロは呼吸をするのも嫌になるほど暑かった。チケットを購入して博物館の中に入ると、ひんやりとした冷房に当てられ、私は正気を取り戻した。

荷物検査を経て中に入ると、ファラオの巨像に迎え入れられた。

 

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