カンボジア・タイ旅行記 5
シェムリアップ→ポイペト→バンコク
カンボジア滞在5日目。いよいよ次の国タイへと向けて出発する。国境越えのバスはNATTAKANバスという会社を利用した。
ホテルのオーナーに頼んで昨日予約を取ってもらった。予約表みたいな物はすでに持っていたので特にすることはない。
今日で長く滞在したホテルともお別れだ。
このシェムリアップの無機質な風景ともお別れである。
バス乗り場まではトゥクトゥクで向かう。迎えに来てくれたのは初日から3日間もお世話になったあのおじさんだった。
おじさんのこのバイクで3日間シェムリアップを走り回った思い出がある。
ホテルのオーナーにも、いろいろ無茶な世界遺産巡りやらの手配をしてもらった。旅では現地の人の支えが頼りになることが多々ある。
最後の移動。朝から車の量は多い。シェムリアップに数機しかない信号が見える。
10分ほど走行すると、NATTAKANバスの待合所のような場所に着いた。
こちらがバスの待合所。想像していたよりも大型のバスである。
エアコン付きの大型バスで、タイへの国境越えに挑戦する。
NATTAKANのバスは1日に2本運行している。8時→16時着と、9時→17時着だ。どちらでもよかったが、バスに乗っているだけだし、新しい世界を早く見たかったので早いほうの便を選択した。
バス乗り場ではすでに何人かがバスの発車を待っているようだった。ここでトゥクトゥクのおじさんには最後のお別れ。また、別の客を迎えに行くのだろう。
彼は今もシェムリアップの路上を走っているに違いない。
しばらく待っていると、発車時刻少し前になってようやく呼ばれた。大きな荷物を載せて大型バスに乗り込んだ。
大型のかなり快適なバス。エアコンやカーテンも着いている。
8時、定刻通りにバスは出発した。バンコク行きで一緒になったのはオーストラリア出身の3人組と、スイスから来たという4人の年配女性たちだけだった。
僕たち8人に対してとても大きなバスなので道中は快適だった。適度に席を移動して日差しをよけた。
シェムリアップを抜けると、舗装されていない道がずっと続いている。
窓から見える景色も代わり映えのない草原が続くのみである。
途中でいくつか中規模の街を通り過ぎていく。
バスに乗り続けて3時間半が経過したところでようやく国境の町ポイペトに到着した。
ここでいったんバスを降りて徒歩で国境に向かう。添乗員も途中までついてきた。
カンボジア側の国境の町ポイペト。大きなカジノホテルが目立つ。
初めて見る陸路での国境。いろいろな人が行き交うので治安が良くないのだとか。
この緑の建物でカンボジアの出国手続きを行う。審査は5分もかからない。
初めての国境は期待と不安で胸がどきどきしていた。自分は本当に国境を越えられるだろうか。今日中にバンコクにつけるだろうか。
出国審査を終えてタイ側の国境に向けて歩き出す。多くの車や人が行き交っている。
大きなホテルはカジノが併設されている。特に理由がなければ素通りするのが無難。
このあたりでバスの添乗員さんとはお別れ。なるべくバスメンバーと離れないように行動した。
カンボジア側のゲート。とにかくいろんな人が入り乱れているので気が抜けない。
大きなカジノホテルをくぐってからさらに15分ほど歩いた。
ようやくタイ側のイミグレーションが見えてきた。すでにお昼時である。
ようやくタイ側のイミグレーションに到着。ここから先は撮影禁止。
ここでは多くのバックパッカーと思われる人が入国審査待ちをしていた。大行列なのになかなか列が進まない。
いろいろな国籍の人が順番待ちをしている。荷物が大きな人も少なくない。ここではまるで日本人らしき人を見かけない。
初めての陸路入国で、未だに緊張が止まらなかった。
結局1時間以上も待ってようやく順番が回ってきた。
審査用のゲートはいくつかあったが、1つだけやたらと審査の厳しいゲートがあった。何人もカメラの中身チェックや荷物検査をされたりしているようだった。
自分が呼ばれたのは違うゲートで、問答も特になく直ぐにタイに入国することができた。
が、
そのゲートにはオーストラリア人の黒人の女の子が呼ばれてしまった。
審査を終えた自分はとりあえず外に出た。一応まだ手続きはあり、待ち合わせは禁止とのことだったのでゆっくり歩き出す。
長い待ち時間と、入国審査の緊張からようやく解放された。
なるべくみんなで集まって一緒にバスまで行こうという提案で、審査を終えたバス仲間はとりあえず待ち合わせできる出口付近まで向かうことになった。
オーストラリア人の子達も、陸路での国境越えは初めてだと言っていた。自分と同じデビュー仲間だったとは。
荷物の搬入審査などで車もごった返しており、混沌とした状態が広がっている。
タイ側の審査出口。ここから先はタイということになる。
ここまで歩いて来て、スイス人の奥方4人とオーストラリアの男の子2人は集まることができた。みんな少し不安だったようで、安堵の表情を浮かべていた。
しかし、いくら待ってももう一人の女の子が出てこない。
審査の厳しい台に呼ばれた女の子だ。みんな少しずつ心配の表情を見せ始める。
南国の強い日差しが容赦なく照りつける。
しびれをきらしたオーストラリアの子が、
僕の連れだから様子を見てくる。みんなは先に行ってて。
と言い残してさっきの場所に戻っていった。
まあ、ここにいても僕らにできることは少ない。タイ側の街、アランヤプラテートへ歩き出した。
心なしか道路が整備されているほか電線もあり、発展している感じがある。
タイ側から見た国境ポイペト。そこには国を分かつ分厚い壁などなかった。
すぐにバスは見つかり、乗車した。添乗員は予想以上に時間がかかっていることで、ずいぶんと心配していたようだった。
乗車して全員がそろうまで待つ。
そこにオーストラリア人の男の子達が帰ってきた。
厳しい審査を受けていたが、もうすぐ終わってくるようだ。
とみんなに状況を伝えた。無事が伝わったのでひとまず安心だ。
その20分くらい後、ようやく女の子が泣きながらバスに入ってきた。
そのときは聞けなかったが、後で、審査の際に執拗な取り調べや手荷物チェック、カメラのチェックなどを受けたと教えてくれた。それがいわゆる黒人差別だったのか自分の知るところではわからない。
そのゲートにはその子以外にも西洋人や東洋人が呼ばれていたし、厳しいチェックをされているのを見ている。だから一概にその子だけ差別されたとは言えないのかもしれない。
一方で、その子がどういう入国審査を受けたのかわからないが、僕らはそれほど厳しい審査を受けていないというのもまた事実である。
人によって審査基準が異なる、というのは明らかにおかしい。
何より、その子が泣くほど辛かった、というのが答えな気がする。
初めての陸路国境越えは、いろいろな思いが交錯した思い出になった。
ポイペトに着いてから全員がそろうまで2時間以上が経過したがようやくタイ側でバスが走行し始めた。
カンボジアと比べるとかなり発展している様子である。
出発するとすぐに簡単なお昼ご飯が出てきた。
炒めご飯とメロンのおまけ付き。どんな弁当だろうとありがたい。
車窓を眺めていて気付いたのは、道路の整備状況である。アスファルトが敷かれているためかほとんど揺れることなく、砂埃もない。
また町中には電線が張り巡らされており、信号もたくさんある。
国が変わるだけでこんなにも変わるものなのかなあと、しみじみ思った。
信号はもちろん、町中にはセブンイレブンもある。電線も目立つ。
緯度はそれほど変わらないはずだが、草原も見かけなくなった。
乗り心地が良くなったのと、国境越えの緊張から解放されたので少しずつうとうとし始めた。
だんだんと街が近づいてきた。途中で高速道路に乗ったのでさらに早い。
バンコクに近づくにつれて大きなビルが目立つようになってきた。
だんだんと都市部に近づくにつれて車窓も変化してきた。すでに8時間以上が経過しているバスの長旅も終わりに近づいてきた。
高速道路に入ってからは早かった。近代化した街に入っていく。
予定よりも2時間遅れたがようやくタイのバンコクに着いた。
仲良くなったオーストラリア人3人組とはここでお別れ。長い旅を共にしたいわば戦友だ。
旅にはすてきな出会いもあるが、やがてお別れもある。
互いに旅の幸運を願ってさよならをした。
さて、バスターミナルに着いた。困ったことにほとんどがタイ語表記だ。
タイに入って一番困ったのは英語表記が全くないこと。字が読めないのでどこに向かえばいいのか見当もつかない。
モノレールに乗るために大きな荷物を引っ張ってかなり長いこと歩いた。
疲れたのでタクシーに乗ろうとしたが、ホテルが遠いと断られてしまった。
途中で迷い込んだ公園。のどかな光景は朝までいたカンボジアとはまた違う光景。
道行くおばさんに謎のチップを取られそうになったり、何度も心が折れそうになったが、ようやくモノレール乗り場を発見した。
電車内はゆりかもめみたいでかなりハイテク。バンコクは文明がかなり発展している。
暮れゆくバンコクの風景。高層ビルが並ぶ風景は日本に近い。
ホテルの場所は非常にわかりにくく、近くを何往復もした。
結局近くの洋服屋のお姉さんに聞いたら、親切に電話してくれてホテルまでの道を聞いてくれた。
あとでお礼にその店で洋服を一着買ってお土産にした。
波瀾万丈な一日だったが無事タイに入国し、寝床を確保できた。
シャワーを浴びて一息つく。すっかりあたりは暗くなってきたが、ホテルの周りを少しぶらついた。
バンコクは車が行き交う大都市である。
夜市を覗いて食べ歩きをした。ナイトマーケットは観光客でごった返し、アジアンパワーを感じた。
この日は横になった瞬間、爆睡してしまった。
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