公共交通機関でたどり着けない世界遺産、カオヤイ国立公園へ【カンボジア-ラオス-タイ】旅行記8日目前編

公共交通機関でたどり着けない世界遺産、カオヤイ国立公園へ

 

パクチョンという町

旅の疲労が蓄積していたためか、睡眠の質が悪くあまり熟睡できなかった。ともあれ、この日は旅の最終日だ。最後の世界遺産カオヤイ国立公園を訪れ、バンコクを目指す。23時発の飛行機で成田に帰ることになっていた。

ところが、この”カオヤイ国立公園”が非常に曲者で、“公共交通機関では絶対にたどり着くことができない”のだ。正確には、入り口までは行けるがそこから先の見学のしようがない、という言い方が正しい。とにかく、どうなっているのか、情報も少ないので実際に行ってきた旅行記をお楽しみいただきたい。

朝起きると異国の風景、というのも今日で終わりだった。

6時半に宿を出て、ナコンラーチャシマーのバスターミナルへ向かった。バスターミナルの椅子でくつろいでいると、ようやくミニバンがやってきた。これに乗って、車で1時間ほど西のパクチョンと言う小さな町を目指す。

7時15分ほどだったが、ミニバンはほとんど満席で出発した。

このミニバンはちょっと進んでは乗り降りを繰り返し、なかなか進まなかった。車内はぎゅうぎゅう詰めで息苦しく、蒸し暑かった。2時間が経過し、朝9時10分前にパクチョンに着いた。

パクチョンは地球の歩き方にも載らないような街だが、想像よりも発展していた。

まずはこのパクチョンと言う小さな町から、カオヤイを目指す。パクチョンからカオヤイへは、バスが出ていた。

なんともいえない、時代を感じさせるバスだった。

フィリピンのジプニーみたいなバス。8月の真夏にハッピーニューイヤーなのはなぜだろう。

満席になるとバスは出発した。パクチョンを出ると涼しげな森林地帯をひたすら走っていった。1時間ほどでカオヤイと思われる町が見えてきた。カオヤイは日本の関東でいう軽井沢のようなリゾート避暑地となっており、高級ホテルやゴルフ場も多くみられた。

ともかく、公共交通機関で、世界遺産ドンパヤーイェン・カオヤイ国立公園の、カオヤイ国立公園入口にたどり着くことができた。

カオヤイ国立公園で降りたのは、私と、3人組の明るいタイ人の若者たち。

カオヤイ国立公園のゲート。バスを乗り継いで、ここまでなら来られるのだ。

旅は道連れ

カオヤイ国立公園のゲートは徒歩でも通り抜けることができるのだが、肝心の自然散策路や滝、ビジターセンター、キャンプ場と言った公園中央部へは車で20分ほどの距離がある。

この間は路線バスが走っているわけでもなく、ツアーが催行されているわけでもない。アップダウンも多い山道なので徒歩では片道3時間以上はかかるだろう。自力で到達することができないのだ。

ここからどうしようかと思案していると、一緒にバスを降りたタイ人若者の3人組が1台のピックアップトラックのヒッチハイクに成功していた。私は素早くその若者たちに駆け寄り、便乗して一緒に乗せてもらうことにした。

ピックアップトラックの荷台に乗って公園を奥へと進んで行く。

かなりの山道を飛ばすこと10分ほどで展望スポットにやってきた。

ここでピックアップトラップの運転手とその家族が出てきて、少し休憩するようだった。私たち荷台のヒッチハイク組もそれに倣って展望台を少し見学することにした。

この日は土曜日、夏休みということもあってか多くの人でにぎわっていたようだ。帰る車と何台もすれ違ったが、バスやミニバンなど交通機関のようなものは一台も見かけなかった。

カオヤイ国立公園の展望台。ここに来るにはマイカーか、ヒッチハイクが必須となる。

少し見学した後でまた車に戻った。よく保全された森林道路を結構なスピードで駆け抜けていく。ピックアップトラックの荷台と言うこともあり、気分は爽快だった。

同乗の3人はバンコクの学生で、この日は公園内に泊まるのだという。

目的地に着くまで、日本のことやタイのこと、どんな旅をしているのかなどひとしきりの質問攻めにあった。

道中では珍しい野生動物を見かけた!なんてことはなかった。豊かな生態系が維持されているとはいえ、車が飛ばすような道路沿いにはさすがに出てくることは無い。ただ、自然環境は本当によく管理されている、というのは見ていてよく分かった。公園内にはゴミ一つ落ちていなかった。

ゲートで車をヒッチハイクしてから30分ほどで、公園の中央部、レストランやビジターセンター、駐車場や売店がある大きな広場にやってきた。ここで車に乗せてくれた家族と別れ、一緒に乗ったタイ人3人組とも別れた。

カオヤイ国立公園観光の中心地、ビジターセンターだ。

イントゥ・ザ・ワイルド

ドンパヤーイェン・カオヤイ森林地帯はタイの北東部に広がる広大な森林地帯で、ここには多種多様な動物、植物、豊かな自然環境が維持されている。バンコクから近い高級リゾート避暑地でもあり、タイの人々にも人気の観光スポットだ。

日本人にとっては訪問難易度の高さも相まってあまり知られていない世界遺産で、地球の歩き方にも”バンコクからのツアーに参加”以外の情報がない。そこで、まずはビジターセンターから回ることにした。

貴重な野生生物の展示。一般的な観光でお目にかかる機会はまず無い。

ビジターセンターの裏のテラスでは豊かな自然の空気を感じることができる。

展示自体はそれほど多くなく15分もあれば全部見て回れるくらいの小規模な博物館だった。この日、バンコクから日本に帰る私は広大な園内をじっくり見るというわけにもいかず、近場の観光で満足することにした。

建物の裏手につり橋と散策路が見えた。とりあえず、ここを歩いてみることにした。

ビジターセンターを挟むように右と左にそれぞれつり橋がかかっていたので、この橋を行けば適当にぐるっと一周して、もう一方の橋でここに戻ってこられる、と考えてのことだった。

歩きやすく、きれいに整備された道を、過酷な自然が覆っている。

ガイドなしで自分のペースで歩けるので、ゆっくり堪能したいならこの道がおすすめ。

珍しい動物に出会えたわけでもなく、きれいな花や華やかな絶景が見られるわけではないが、世界遺産の大自然のほんの一部を体感することができた。

こうした道にもゴミ一つ落ちていない。自然保護意識の高さがうかがえる。

水場では数羽の鳥が見られたが写真には納められなかった。

散策路は複雑に曲がりくねっているのでちゃんと戻ってこられるか心配ではあったが、時々人の声が聞こえたし、道路を走る車の音も聞こえたのでなんとなく大きく外れていないことだけは分かった。

私の足で35分ほどでもう片方のつり橋にたどり着き、戻ってくることができた。

無事、ビジターセンターの広場に戻ってくることができた。

駐車場近くでは臀部の赤い猿の家族が歩いているところを見かけた。

朝から動き回ったが、何とか個人で公共交通機関を駆使しつつ、カオヤイ国立公園の中心部にたどり着き、観光することができた。時刻は11時40分といったところだった。

私のタイでの滞在残り時間は12時間を切っていた。この大自然の中心部から10時間後にはタイの空港にいなければならないのである。まずは、と私は考えるのを避け続けてきた問題に向き直った。

今度は私一人でヒッチハイクをしてゲートまで戻らねばならない。

行きは若者たちの勢いに便乗させてもらったが、帰りは私一人だった。私は、不幸なことに、知らない人に対する極度のコミュ障と、ガラスのメンタルを持ち合わせていた。

なんとなく、駐車場の出口に立ってうろうろしていたが、なかなか止まってくれる車は無かった。タイの日差しは容赦なく照り付け、不安でいやな汗が額を流れる。

世界遺産の大自然の中で、無為に時間だけが過ぎていった。

 

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