世界遺産バーンチエン遺跡、ウドンタニーからタイの国鉄で南へ
ウドンタニーからバーンチエン遺跡へ
ノーンカーイからウドンタニーに向かう始発のバスは6時発で、その後は頻繁に出ているという話だった。
6時過ぎに自然と目が覚めた私はトゥクトゥクでバスターミナルに向かい、7時発のミニバンに乗った。この日は、ウドンタニー郊外にある世界遺産、バーンチエン遺跡を訪れる計画だった。
遺跡は2千~3千年前のもので、日本でいう縄文時代に当たる遺跡である。彩色された土器が多数見つかっている、貴重な先史時代の遺跡なのである。
タイの道は広く、整備されているので乗り心地が良い。バンのスピードも速く、8時前にはウドンタニーに着いた。
タイ北部の大都市ウドンタニーは、他の東南アジアの都市と比較してもかなり発展した印象を受ける。
バーンチアン行きのバスは南側のターミナルから出ているとのことだったので、Googleマップのナビを頼りに5分ほど歩いた。
東南アジアらしさのあるバスターミナルだが、秩序だっていて、静かだった。
サコンナコーン行きのバスに乗ればよいと地球の歩き方には書いてあった。その通り、8時15分発のサコンナコーン行きのバスに乗車した。ウドンタニー出発時点でバスの席は満席だった。
サコンナコーンとアルファベットで大きく書かれているので分かりやすい。
バスは非常にゆっくりとしたスピードで、大通りを東へと走っていた。GoogleMapのバーンチエン遺跡はかなりずれた場所をピン差ししており、実際はその場所よりも手前側の何もない場所で降ろされた。
バスのスタッフが非常に良くしてくれて、バーンチエン遺跡に向かうトゥクトゥクまで呼んでくれた。おかげで、面倒な交渉も必要なく、正規料金と思われる100バーツで遺跡に向かうことができた。
交差点からそこそこ距離があったので、歩いて向かうのは無謀だと思う。
バーンチエンの看板が道路上にいくつか立っている。
バスを降りてからトゥクトゥクで7~8分くらいかかり、バーンチエン博物館に着いた。
世界遺産バーンチエン遺跡観光のメインとなるのは、ここバーンチエン博物館で、出土品や発掘現場の再現、遺跡の解説など充実した展示内容となっている。Youtubeに日本語版の解説音声も公開されており、日本語で展示を見て回ることができる、非常に便利になっている。
博物館の敷地では大きな世界遺産のシンボルが目立っていた。
オーキー・ドーキー
バーンチエン遺跡は2千年から3千年前とされる先史時代の痕跡が残る貴重な文化遺産である。多数の彩色・文様土器が発掘されており、こうした土器は移動に適さないことから定住文化を示す証拠とされている。
博物館にはこれでもかとたくさんの土器が展示されており、遺跡の規模の大きさを感じさせられた。開館時間から20分ほど経ってから訪れたが、中には見学者は1人もいなかった。私一人に対して、スタッフは10人以上はおり、どの展示室でも一挙手一投足を見られているようで若干居心地は悪かった。
ディズニーシーのインディ・ジョーンズを彷彿とさせる土器の復元作業場。
ここに映る土器はほんの一部。実際は7倍くらい本当にたくさんの土器があった。
展示室も10を超え、人骨や装飾品に至るまで種々の出土品の展示や発掘現場の再現セット、当時の暮らしの予想復元模型など非常に充実していて、世界遺産マニアとしては1日中じっくり費やしたいほどだった。
管内は2階建てでどちらも隅々まで飽きさせない展示になっていた。
本当はもっと長居していたかったが、きりがないので音声ガイドに従うように見学して、適度に切り上げた。滞在時間としては1時間だった。ここから徒歩10分ほどの場所では実際の発掘現場が保存されている場所があるというので行ってみた。
道路をまっすぐ進むだけなので分かりやすい。タイは田舎町まで道路がしっかり舗装されている。
発掘現場はワット・ポー・シー・ナイという寺院の敷地内にある。
発掘現場を覆うように立派な建物が構えられており、壁には解説展示も掲示されている。
発掘現場の裏手は、このように大きな寺院となっている。
世界遺産、バーンチエン遺跡のうち一般の観光客が楽しめるのはこの2か所のみなので、見学を終え、ウドンタニーに戻ることにした。しっかり遺跡見学を楽しんでしまい、滞在時間は合計2時間、時刻は11時半になっていた。
ここからウドンタニーに戻るのは少し骨が折れた。バスを降りた交差点まで行きたいのだが、この小さなバーンチエン村にはトゥクトゥクが見当たらず、コミュ障な私はヒッチハイクをする勇気もなかった。
村の中心部でオロオロしていた私を見かねた優しいおじさんが、バイクでバス停まで送り届けてくれた。トゥクトゥクと違い、バイクは風をダイレクトに感じられるので気持ちが良い。おじさんに行きと同じ100バーツを渡すと、彼は嬉しそうに村の方角へ戻っていった。
ルアンパバーンで買った無味のパンをかじりながら待つこと15分、バスが来た。
線路は続くよどこまでも
行きよりも乗り降りが少なかったためか比較的スイスイとバスは進み、ウドンタニーに戻ってきたのは13時過ぎだった。朝からまともな食事を腹に入れてなかったが、残り日数もあと1日となっているので移動を優先することにした。
昨日見た線路を見た私はなんとしても電車に乗りたい気分だったので、ウドンタニーの駅まで早足で進んだ。
電車の駅を見たのが久しぶりすぎてなんだか懐かしい気持ちさえした。
駅に着いたのは13時20分。時刻表を見ると、13時40分発の電車があった。その後の二本は寝台列車だ。
幸いにもチケット売り場に列は無かったので、この列車の終点、ナコンラーチャシマーまでのチケットを購入した。これで、タイで鉄道に乗るという希望と、できるだけタイ中央部、最後の目的地カオヤイ国立公園の近くまで移動するという2つが同時に達成された。
駅前のセブンイレブンでちょっと奮発して長旅用のごちそうを買い込み、タイ国鉄を待った。この列車は普通列車で、ノーンカーイからウドンタニーを経て、終点ナコンラーチャシマーまで向かう。
時間ぴったり13時40分に列車が到着した。ウドンタニーで多くの人が乗りこんだ。
乗り込んだ人数の多さに圧倒されてぎゅうぎゅう詰めになるかと思われたが、一人ひとり順番に座っていくと、全員が座ることができるくらいの余裕があった。あとは終点まで5時間、ひたすら乗っているだけだった。
この路線は1日4,5本しかないので、乗れたのは本当にラッキーだった。
しばらくは買いこんだごちそうを消費するのにいそしんでいたが、それもひと段落すると、だんだん沈んでいく太陽と、日に照らされたタイの大地に見入っていた。
電車内は何度か売り子が車内販売に来た他は、特に代わり映えの無い日常だった。駅に止まり、乗り降りがあり、また発車する。時々大きな都市に来るととたんにあわただしくなり、車内の人の顔ぶれがガラッと変わる。その繰り返しだった。
暮れ行く夕日と、線路と、タイの大地。こんなにのんびり移動できたのはこの旅で初めてかもしれない。
バスに激しく揺られる旅もいいが、ゆったり電車で移動するのも悪くない。
車内は南に近づくにつれ、どんどん人が少なくなってきた。そして、日が傾き始め、長旅も終わりに近づいていた。もうすぐ終点、ナコンラーチャシマーだ。
ウドンタニーから電車に揺られること5時間、18時半を過ぎた所だった。
ナコンラーチャシマーは、何もないのだが中部では比較的大きな都市である。
駅を出ると、凝り固まった背中をストレッチで伸ばし、街の方へ歩いて行った。できれば今日のうちにカオヤイ国立公園に近いパクチョンという街に移動したいと思い、まずはバスターミナルへ向かった。
19時を過ぎたところでバスターミナルに到着。パクチョン行のミニバンは最終が18時発、とのことだった。
明日の早朝に乗るパクチョン行きのミニバンの発着場所を確かめることができたので、すべて良しとしよう。この日はここに宿泊することにした。19時を回るとすっかり日は暮れていた。
タイ中央部の移動の要所だけあって、さかんに車が行き交い、賑わいを見せていた。
大都市だけあって宿の選択肢も多く、安くて評価の高い、コスパの良い宿を選んだ。この旅で最後の宿泊になるので、さすがに一人部屋でのんびりしたかった。明日にはバンコクから出国だというのに、バンコクから遠いナコンラーチャシマーの宿にいるのは、非常に私らしい、と思った。
ナコンラーチャシマーでもっとも有名なターオ・スラナリー像。多くの人が熱心に祈っていた。
大きな門と、柵の中で寝る、猫。柵の中にいれば安全なので、実に賢い。
しばらくはナコンラーチャシマーの街をうろうろしてタイ最終日を満喫していた。昨日のノーンカーイよりは大きな都市なので、人の流れもあって面白かった。一軒の屋台に腰かけると、旅の締めとなる夕食をいただくことにした。
プノンペンの屋台飯に始まり、ナコンラーチャシマーの屋台飯に終わる。
ラオスのルアンパバーンやポーンサワンあたりでは、この旅がどう終わるのか不安だったが、無事ここまでやってくることができた。
明日、最終日は朝早くパクチョンに移動し、自然遺産、カオヤイ国立公園に向かう。自然遺産を堪能した後はバスか何かでバンコクに向かい、深夜の便で日本に帰る。宿のベッドで横たわる私の脳内を、今回の旅の様々な情景が横切っていた。
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