ポーンサワンの大草原の牛と小さな空港とヴィエンチャン-ノンカイ国境
瞑想と迷走
ポーンサワン郊外の世界遺産、ジャール平原の見学を終え、市内に戻ってきた。そもそも前夜が野宿だったためか、時刻はまだ9時といったところだ。飛行機の離陸は16時。ポーンサワンで7時間以上も時間をつぶさなければならない。
しばらくはジャール平原のサイト2,3に行くことができそうな車を探していたが、人は見当たらないし、バイクもないのであきらめて食事にした。
ラオスの主食は麺なのか、どこの食堂でも安い麺類が多い。
ポーンサワンはシェンクワーン県の州都であるのだが、特に発展しているわけでもなく、見どころもない。人も少ないので何か楽しめるものがあるわけでもなかった。
街を歩いていて唯一にぎわっていたマーケット。
東南アジアのマーケットもすでに見慣れたものになっていた私は、特段ここポーンサワンの市場に惹かれたものがあるわけでもなかった。
残念ながら時間はまだたっぷりと残っていた。そこで私は究極の暇つぶしを思いついた。そうだ、空港まで歩いてみよう。
シェンクワーン空港は先ほど訪れたジャール平原よりも近い。たったの2kmだった。
路上で犬がリラックスできるくらい、人が居ないし、車も通らなかった。
8月だったが高原のためか肌寒いくらいで、平たんな道の散歩がいい気分転換になった。時刻は11時。空港の近くまで来たのは良いが、今度こそ何もすることがなくなった。
そこで、究極の暇つぶし、”瞑想”に励むことにした。誰も通らない道端の日陰に腰かけ、座禅を組んで息を整え、目をつむった。いろいろな出来事がありすぎる、濃厚な5日間だったのでいろいろな思い出を振り返るのにちょうどよかった。
体感では30分があっという間に経ち、さらに1時間が経とうとしていた。私の耳に、かすかにリーン・リーンという小さな鈴の音が聞こえた気がした。
うっすらと目を開けると、遠くで草をはむ牛の群れが見えた。
牛の首にぶら下がっている大きな鈴が、彼らが動くたびに大きな音を立てていた。ただ、距離も遠かったし、興味もなかったので瞑想に戻った。
・・・
リーン・リーン
リーン・リーン・リーン
リーン!!!
気持ちを集中させていた私は驚いて目を覚ますと、右、左、背後をすっかり牛の群れに囲まれていることに気が付いた。
牛の群れは道路沿いの草を食べながら、じりじりと私の座る場所に近づいてきたようだ。
しばらくは私を避けるように草をはみ、群れは私を警戒しているようだったが、一匹の牛がおもむろに近寄ってきて私の足をなめだした。
気持ち良くはなかったが、はねのけるほど不快でもなかったのでじっとしていた。
すると、今度は私も私も、というように囲んでいた牛たちが近寄ってくるではないか。1頭だけなら対処ができたかもしれないが、囲まれると身の危険を感じた。
たくさんの牛に四方を囲まれた私は、牛たちを優しく押しのけると、その輪から脱出した。
牛の群れから離れた場所で呼吸を整えると、時刻は14時になろうというところだった。
大草原の小さな空港
シェンクワーン空港はびっくりするくらい小さくて、何もない空港だった。今までいろいろな国の空港を見てきたが、その中でも最小級の空港で、売店すらなかった。
普通の民家と見まごう小ささのシェンクワーン空港。
1階建てで、チケットカウンターが2社分ある。ベンチが数列あって、トイレがある。ただ、それだけだった。建物に似つかわしくないバカでかい金属探知機と赤外線装置があり、その向こうはもう待合室だった。
この日、この空港から飛び立つのは16時発と16時半発のヴィエンチャン行きだけのようだった。離陸の時間が近づくにつれて続々と人が集まってきたが、それでも満席には程遠かった。
待合室の外には滑走路が見え、そのまま歩いて飛行機に向かう。
時間よりも早く飛行機に呼ばれた。大草原を歩いて飛行機に向かう。
ラオスカイウェイの飛行機は墜落の多い中国製の機体で、一部には不人気らしい。まあ、こうして無事記事を書いているので大丈夫だ。
私の乗った飛行機は予定時刻よりも15分早く離陸し、たったの30分でヴィエンチャンに着いた。悪夢のようなミニバンの旅がうそのようだった。私は、飛行機から窓の外を眺めながら涙した。
ヴィエンチャンの空港も一国の首都だというのに覇気が無かった。
時刻は17時前だった。このままヴィエンチャンにとどまることもできたが、今のうちに進めるところまで進んでおこうと思い、タクシーを拾ってヴィエンチャンのバスターミナルへ向かった。
国境を越えて
ヴィエンチャンのバスターミナル。建築途中なのか、鉄骨がむき出しの工事現場のような場所だった。
各所から来たいろいろな国籍の旅行者がバスターミナルを行き交っていた。
17時半に着いた私はすぐさまチケット売り場へ向かい、タイへの国境を超えるバスのチケットを手に入れた。ヴィエンチャンからノーンカーイに向かうバスは頻繁に発着しているのだが、夜間は国境が閉まるのでほとんど最終便に近かった。
チケット売り場はターミナルの外に出たところにあるので注意。少しさまよってしまった。
18時に出たバスはたった5人の客を乗せて出発した。指定席だったが後ろはスカスカだった。
またしてもメコン川を越える。カンボジアからラオスまで見飽きるほど見た川も、これで最後だ。
ラオス側の出国は一瞬の流れ作業だった。入国時に記入しておいた紙を差し出してスタンプを押してもらう。ワイロもなく、3,4分で終わった。急げ急げとバスのドライバーに謎に急がされたので写真を撮る暇もなかった。
タイラオス友好橋から。何気なくカメラを構えたが、非常にエモい写真が撮れていた。
タイの入国ゲートに到着。ここでバスともお別れ。同乗者との短い旅も終わりだ。
日本人なのでビザはいらないのだが、そのことに気づくまでうろうろしてしまい、20分くらい無駄にしてしまった。無事にタイの国境を超えると、時刻は19時。3か国目、タイに着いた。
国境を超えるとすぐ、トゥクトゥクの勧誘が群がってきた。私はこの日、ノーンカーイからウドンタニーまで移動してしまおうと考えていたが、最終バスは18時で、もう無いようだった。
国境を超えると、タイ。セブンイレブンがそこかしこにあり、文明を感じた。
この日はもう移動はできないので、国境付近で適当な宿を取ると、腰を落ち着けた。昨夜から今朝にかけてはどうなることかと思ったが、私は無事、タイに入国しセブンイレブンのおにぎりをほおばっている。
夜風に当たろうと思い、宿を出てノーンカーイを散歩した。道路は舗装されて綺麗で、何もない通りにも煌々と明かりがついている。
残すは2日。世界遺産はバーンチエン遺跡と、カオヤイ国立公園の2か所だ。2か所を訪問して、タイの首都、バンコクを目指す。いよいよ旅の終わりが近づいてきた。
散策していると線路を発見した。明日は、どこかで電車に乗ろう。と、ふと思った。
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