レンタルバイクでチャンパーサック。世界遺産ワットプーの魅力 【カンボジア-ラオス-タイ】旅行記3日目前編

レンタルバイクでチャンパーサック。世界遺産ワットプーの魅力

 

リベンジ

朝の7時。相部屋の宿泊客はすでに半分に減っていた。良く晴れた気持ちの良い朝だった。

7時半、フロントに降りていき、世界遺産のある街、チャンパーサックとワットプーへの行き方を聞いた。すると、チャーターバイクや乗合バンはチャンパーサックの街までしか行かないため、バイクをレンタルしていくのがいいと勧められた。

それを聞いた私には苦い思い出がよみがえった。この日から4年近く前、ベトナムでレンタルバイクで大コケして痛い目にあったあの日のことだ。

チャンアンの景観関連遺産に行くもバイクで事故る 【ベトナム】旅行記5日目前編

あの時はエンジンもブレーキもわからなかった私だが、今は中型二輪免許を取得し、日本では東京から大阪まで往復したこともある。ラオスでのレンタルバイクはいわばリベンジだった。

待つこと数分。125ccに乗ったバイク屋のお姉さんが現れた。

形式的な契約書にサインをして、パスポートを預けた。バイクの簡単なガイダンスを受け、この125ccのバイクにまたがった。バイクの乗車経験を聞かれたが、今の私は自信をもって”大あり”と答えることができた。

パークセーの市内を抜けて、まずは南へ向かう道路を目指す。

※ここからしばらく、バイクに取り付けたGoProからの切り抜き写真が続きます。運転をしながらのカメラ撮影ではございません。画角や光量など調節できなかったためお見苦しい写真もありますが、ご了承ください。

東南アジアのごちゃごちゃとした街をバイクで走るのはやはり楽しい。

メコン川を渡って南へ。慌てずゆっくり進んで行く。

パークセーの橋を渡ってしばらくは2車線の大きな道が続いた。ここでケガや事故をしてしまうとラオスの農道なのでどうなるか全くわからないという怖さもあり、安全運転で行くことにした。

20分ほどで大きな料金所に差し掛かった。バイクは料金不要のようだ。右側を抜けた。

ここを通ってすぐの交差点を左に曲がる。あとはチャンパーサックまでは1本道。約1時間のバイク旅だ。時々スマホのGPSで現在地を確認しながら南下していった。

朝の8時になろうかという時間。まだ車も少ない農道を快走するのは気持ちがよかった。

この日は月曜日だった。普段の月曜日なら満員電車に揺られ、出社している時間帯だ。そんな平日の早朝にラオスの田舎道をバイクでかっとばしている。最高にいい気分だ。

なんて浮かれていると、路上で寝ている牛とぶつかりそうになった。

天気は良いがやはり暑く、ヘルメットや背中に汗は滲み、のども乾いてきた。風を切ること1時間、ようやくチャンパーサックの入り口が見えてきた。

ゲートの上には世界遺産マークとシンボルのワット・プーが描かれていた。チャンパーサックの街をそのまま通過してワット・プー方面へと急ぐ。

バイク旅で最初に直面した悪路①。雨季は水はけも悪く道路が荒れていた。

チャンパーサックの街を抜けてワット・プーに向かう途中で、浮かれていた私はとんでもないことに気が付いた。バイクのメーターゲージがやけに点滅していると思ったらガソリンが底を尽きそうだったのだ。

チャンパーサックにはガソリンスタンドがあるかもしれないがもうだいぶ来てしまった。道を歩く人たちにガス、ガス!と連呼しながら状況を理解してもらうと、道行く人は皆そろって進行方向を指さした。

どうやらガソリンスタンドがあるらしい。しばらく走っていくと派手な彩色のガソリンスタンドが見えてきた。私はそこに飛び込んだ。

このガソリンスタンド、開いていそうで開いていなかった、、

ガソリンスタンドでは2人の若い女性が座ってだべっていた。バイクがガス欠寸前だと告げると女性は残念そうに首を振り、店はやってないよ、と言った。やっとの思いで飛び込んだオアシスは蜃気楼と化し、目の前で霧散してしまった。

私はフィリピンの山奥、バナウエの街でのある光景を思い出していた。大きなガソリンスタンドがないその町ではコーラの瓶にガソリンを小分けして普通の売店が販売していた。もしかしたらこの周辺の売店に行けば小分けのガソリンがあるかもしれない。ここからパークセーに行く燃料は無いが、チャンパーサックまで行ければ何とかなるだろう。私は前に進むことにした。

走ること5分、私はワット・プーの駐車場にバイクを止め、歩き始めた。

リンガ・リンガ

やけに洒落たチケットブースに行き、入場券を購入した。

今まで見てきたラオスの光景とは全く異なる、金のかかったきれいなチケット売り場や謎の彫刻、遊具に観光客受けしそうなおしゃれな売店。世界遺産基金の使用用途がとっても気になるところだが、先を急ぐことにした。

奥に歩いていくと、小さな博物館があった。チャンパーサックの文化的景観に関する歴史を学べる。

履き物を脱いで中に入る。内部は撮影禁止だった。世界遺産に関するパネルやチャンパーサックの歴史、出土品のレプリカなどが展示されていたが、私はあまり魅かれなかった。

入り口からワット・プーの参道までは少し距離があるので、トラムが定期運航している。

20人は余裕で乗れるであろうトラムは私と、白人のおじいさんとそのガイドを乗せて出発した。

トラムが到着すると、ワット・プーの中でも特に特徴的なリンガの参道が目に入った。寺院に向かって伸びるリンガの列は壮観だった。

等間隔に並んだリンガが奥まで続いている。

勘のいい方は気づいたかもしれないが、リンガは男性器を模したシンボルだ。ヒンドゥーの最高神、シヴァの象徴でもあり、繁栄の象徴でもあるリンガはヒンドゥー系の寺院群でよくみられる像である。

私も数々の国・世界遺産を訪れ、その土地ごとに異なるリンガを見てきたが、ここまでたくさんのリンガが並んでいる光景は初めてだった。圧倒されつつも奥へと進んで行く。

100mほど進むと宮殿が見えてきた。観光客はほとんどいない。

遺跡の回廊は内部を探索することができ、映画の主人公のような気分になった。

チャンパーサックは5世紀ごろに繁栄したチャンパー王国の首都で、ここ、ワットプーは11世紀~12世紀ごろにかけて建設された、クメール風のヒンドゥー寺院だ。そのため、カンボジアのアンコール遺跡群やプレアヴィヒア遺跡と似ているところが多い。

彫りこまれたレリーフを見ながら回廊を歩き、クメール遺跡の歴史を堪能した。

象と鰐と蛇

ワット・プーの大きな特徴だが、本殿は山の中腹にある。宮殿を越え、なかなかにハードな階段を登っていくと小さな本殿と、高い場所からの絶景を望むことができる。

宮殿からリンガの参道を経てさらに奥へと進んで行く。振り返ると美しい緑が広がる。

整備されていない、歴史ある遺跡の階段を登っていく。

日影も少なく、汗をかきながら登っていく。登っている観光客は家族連れしかいなかった。

階段は見た目以上に高低差があり、足で淡々と登るというよりは手足を使って這い上がるようなイメージだった。足腰に猛烈な疲労を感じながら登ると、そこには小さな祠があった。

山を登った先にあったワット・プーの本堂。クメール様式の美しい祠だ。

本堂には4体の仏像が収められている。静かに祈りをささげて引き返した。

下の宮殿と比較すると小さいが、レリーフや彫刻は素晴らしかった。

本殿の南側には岩下に仏像が数体おかれており、水を引く水路もあった。

今辿ってきたリンガの道と宮殿、チャンパーサックの大地が見える。

さて、この山腹部にあるのは美しい本堂のみではない。少し離れた場所に象と鰐と蛇の石像が置かれているのだという。5分ほど歩くと、まず目に入ったのは、象だった。

少し斜めに傾いた、大岩に彫られた象は大きく、そして神々しかった。

同じく、放棄されたように無造作に置かれた蛇の彫像。

そして、最も興味を引いたのは大岩にぽっかりと模られた鰐の石像であった。これら3つの石像はワット・プーの遺跡の中でも年代不詳の物であり、独特の雰囲気があった。特にこの鰐の石像は人身供養に用いられたという、不気味な言い伝えも残る。

山中において、独特のオーラを放っていた鰐の石像。人の形のようにも見える。

朝早い時間に出てきていたので観光にはかなり時間の余裕があった。この神秘的な場所とオーラがとても気に入り、しばらくここにとどまり、肺に新鮮な空気を溜めた。

その後、山を下りてリンガの参道を戻り、宮殿を通過してさらにトラムに乗り、元のチケット売り場まで戻ってきた。雨季のためかここで激しい雨に降られたが、10分ほどで止んだようだった。

ここ、チャンパーサックの世界遺産は正式名称を“チャンパサック県の文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺産群”という。ワット・プーがメインであるのだが、チャンパーサックの街を含めた寺院や遺跡が構成資産に含まれているのだ。

世界遺産研究家としては、それらの遺跡や寺院もまとめて見ておきたかった。変わりやすい天気と、残り少ないガソリンが心配だったが、私は世界遺産巡りを続けることにした。

 

次の記事はこちら

チャンパーサックの遺跡と寺院と、小さな恋のものがたり 【カンボジア-ラオス-タイ】旅行記3日目中編

前の記事はこちら

破産したソリヤバスでプノンペンからラオスのパークセーに行く 【カンボジア-ラオス-タイ】旅行記2日目

最初から読む方はこちら

カンボジア・ラオス・タイ東南アジア縦断旅【カンボジア-ラオス-タイ】

 

下のランキングボタンをクリックして応援していただけますと幸いです。

にほんブログ村 旅行ブログ 世界一周へ
にほんブログ村

本サイトで紹介する情報は筆者の訪問当時の現地情報となります。実際に行ってみて変更や意見等がございましたら、コメント等でお知らせいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

 

また、本サイト内の記述、画像、写真の無断転載・転用を禁止します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です