石見銀山遺跡とその文化的景観 【日本】 行き方と難易度

石見銀山遺跡とその文化的景観の行き方

日帰り難易度★★★★★

石見銀山は、島根県に所在し、戦国時代から江戸時代に掛けて相当量の銀の採掘が行われました。

最も有名なのは間歩(まぶ)と呼ばれる手彫りの坑道です。現在では大久保間歩と龍原寺間歩のみが一般に公開されています。

石見銀山はその一帯が文化的景観としても登録されており、鉱山のみならず鞆が浦などの銀を輸出した港や温泉津温泉郷、石見城跡などが世界遺産に登録されています。

その一方で、島根県の山中にあり大都市から離れた位置にあるので訪れるのが困難な世界遺産でもあります。

石見銀山の行き方

JRで行く場合は、近郊の岡山駅から”特急やくも”で出雲市駅まで向かいます。山陰本線に乗り換えて太田市駅へ行き、そこから路線バスで約30分です。バスは1時間に1~2本出ています。

また、広島駅から2時間半所要の路線バス”石見銀山号”も1日2本出ています。こちらは乗り換えもなく直接石見銀山世界遺産センターに発着するため便利です。

車で行く場合は、山陰方面からだと国道9号線で仁万から、広島方面からだと大朝ICから行くことになります。渋滞の懸念は出雲市付近のみです。ナビ通りに走れば迷うことはないでしょう。

石見銀山の全体図。世界遺産登録地域は広範囲に及ぶ。

豊かな自然に囲まれた大森地区。文化的景観にも登録されている。

バスは石見銀山世界遺産センターに停車する。広い駐車場もあり、ここが石見探索の拠点となる。

大森地区

石見銀山公園というバス停はなく「大森」というバス停で降ります。石見銀山公園は一般公開している坑道『龍源寺間歩(まぶ)』(間歩とは坑道の意味)への玄関口となります。

ここから龍源寺間歩までは舗装された道があるが生活道路ということで一般車は入れません。車で来た方はこの駐車場を利用することになりますが、駐車スペースが少ないのですぐ満車になります。

車で10分ほど先にある「世界遺産センター」の駐車場に停めて路線バスでここまで降りてくるのが一般的なアクセスルートになります。

世界遺産センターからはシャトルバスが運行しており、大森地区に向かう。

自然豊かな公園。駐車スペースもあるがすぐに満員になってしまう。

石見銀山公園の近くには、ところどころに観光客のための店舗もある。

基本的には一般の方の住居であるため,派手な看板もなく、自動販売機も木枠で囲まれるなどして昔ながらの雰囲気を壊さないような工夫が随所に見られた。

昔ながらの家並みが並ぶ一角がある。この大森地区も世界遺産の地域に入っている。

銀採掘で富や権力を得た当時の暮らしぶりが窺える住宅も残っている。

代官所跡や熊谷家住宅など見所も多いので自転車を借りて巡ると良い。

五百羅漢

石見銀山公園のすぐ近くにある石室山羅漢寺は1766年に建立された高野山真言宗の古刹です。すでに、石見銀山の発掘が始まってからの建立で、多くの職人さんたちの心の支えになったそうです。

ここで拝観料を支払って、寺を見学し、道路を挟んだ反対側にある五百羅漢へ向かう。

こちらは本堂にあたる部分。内部も見学ができる。

かつては,3つのお堂があったそうだ。写真の右側が左端のお堂、中央が一番大きいまん中のお堂だが、明治期の地震によって崩壊してしまい現在もそのままの状態だった。

道路を渡って小さな川を越える。そのままチケットを持って五百羅漢側へ向かう。

山肌を掘るようにしていくつかの堂が造られている。

五百羅漢の入口。洞窟なのでどこかひんやりとした空気が漂っている。

左右のお堂にはたくさんの羅漢が並んでいた。同じ顔、同じポーズの羅漢はないという。

龍源寺間歩

龍源寺間歩へ行くには、石見銀山公園から上り坂の山道が2km程続くのでかなりきついです。石見銀山公園の近くに何件かあるレンタサイクル店で自転車を借りるのがお勧めです。

山道で坂が続くので電動自転車が借りられればそちらのほうが良いです。筆者も電動自転車を借りようと思いましたが,大型連休ということであいにく30分以上の待ちでした。

普通の自転車を借りましたが、途中自転車を押して歩いて向かわざるをえない急な上りの所も何か所かありました。もちろん、自転車を使わないで,徒歩で行く人もたくさん見かけました。

最初は街の中なので自転車でもすいすい進むことができる。

このような上りの山道をひたすら進む。あるくと50分ほどかかる。

途中に、人がかがんで入って行くような小規模な坑道の出入り口が何か所か見られる。これは福神山間歩。

こちらは人が通るのではなく、水の通り道であった新切間歩。

自転車に乗ったり、押したりして20分ほど進むと駐輪場がある。ここで自転車をおいて歩く。

龍源寺間歩のチケット売り場が見えてくる。右手にあるのが、木枠に囲まれた自動販売機である。

龍源寺間歩の入り口は、途中でみかけた小さい入り口とは違い、規模は大きい。

山に掘られた坑道。見学用としてかなり手が入れられている感じがある。

源寺間歩の内部。掘り手の人足を含め多くの人の行き来があったと思われる。

坑道内部には派生してたくさんの穴が空いている。内部はとても寒いので服装に注意。

坑道内部は狭いので一方通行。入口側に戻ってくることはできない。

後半は手すりつきのスロープになる。下がぬれていてとても滑りやすい。

龍源寺間歩の出口側。入口側とはかなり離れた場所に出てくる。

出口には銀鉱石の実物が置かれている。その重さを実際に体感できる。

佐毘売山神社

龍源寺間歩の出口から駐輪場の合流地点まで向かう途中、右手にあるのが佐毘売山(さひめやま)神社です。約100段の石段を登ると本堂が見えてきます。

世界遺産のうち”銀鉱山跡と鉱山町”の範囲内に含まれ、こちらも世界遺産の構成資産となっています。入口が地味でやや見逃しやすいので注意。

佐毘売山神社の入口には名前が彫られた大きな石碑が建っている。

規模はそれほど大きくない。三女神を祭ったことから三姫山神社、さひめやまが由来とされる。

こうした女神を祀る神社は出雲地方に多いらしい。

石段はかなり体力を使う。大森地区へ帰るまで距離があるのでムリは禁物。

清水谷精錬所

石見銀山の銀の精錬は当初、原石を船で中国まで運び、中国で行っていました。それを国内で行うために新設したのがこの清水谷精錬所です。

明治27年に創業を開始しましたが、十分な生成効率が得られず実質稼働したのは1年半だったそうです。

清水谷精錬所跡は龍源寺間歩と石見銀山公園の間に位置しています。途中見所が数か所あるが、案内板が小さいので、見逃してしまうこともあります。あらかじめ見たい場所の位置関係はおさえておくと良いです。

龍源寺間歩から石見銀山公園へ戻るときはほとんど下り坂なので、自転車の場合、かなりのスピードが出ます。

清水谷精錬所の入口。看板が小さく、ほとんど目立たないのでわかりにくい。

精錬所はほとんど稼働することはなかった。現在は廃墟のようになっている。

精錬所跡の左手は坂道となっており、上に登ることができる。

精錬所稼働時は十分な精度の銀を生成することができず、採算に見合わなかった。

近くで見ると立派な石組みが残っているのが分かる。

清水谷精錬所の頂上部分。さらに奥へ進むとトロッコ跡もある。

石見銀山世界遺産センター

石見銀山世界遺産センターは,石見銀山公園から車で10分ほどのところにあり、この周辺の散策の起点となります。駐車台数もかなり多いです。

内部は石見銀山の歴史や当時の暮らしなどを展示した博物館のようになっています。また、ここから大森地区へは無料のシャトルバスが運行している他、広島駅や太田市駅へのバスの発着所でもあります。

また、大久保間歩の一般公開ツアーの集合場所、予約受付場所でもあります。

内部に資料館がある。また、ここが大久保間歩見学ツアーの集合場所になっている。

石見銀山に関する様々な展示がある。実物の見学前に勉強しておくと面白い。

大久保間歩

石見銀山遺跡の中で最もその特性を表していると言えるのがこの大久保間歩です。初代奉行であった大久保長安の名を取ってつけられました。

見学には許可を得たガイドが同行したツアーでなければなりません。大久保間歩見学ツアーは土日しか催行されておらず、原則予約制です。

見学の予定が決まっている人は予約しておくと安心です。ツアーは1日4回、1回につき20名程度と定員が決まっています。また、12月~2月の冬期は解放されていません。

予約が済んだら、ネットでツアー参加の注意事項をチェックしておきましょう。見所は銀の鉱脈と最深部の巨大空間福石場です。

石見銀山世界遺産センターの前で専用のバスに乗り、10分程度で大久保間歩のふもとに着く。一般車では行けない。

バスを降りたところで杖の貸し出しがあり、身支度を整えたら右手に見える坂を登っていく。

ここを過ぎるとトイレが無いのであらかじめ済ませておく必要がある。

ゆるやかな坂道を上り始める。20分ほど掛けて大久保間歩まで歩いて行く。

ガイドさんから、水抜きの穴の必要性などの説明を聞く小休憩がある。ここは下金生坑。

呼吸を整える小休憩がはさまり、およそ20分ほどかけて登っていく。

坑道内の水抜き穴でもあった金生坑。ひんやりとした風を感じる。

金生坑を越えるとさらに急な山道が続く。健康な男性でも息が切れる。

段差が急な階段もある。足腰に自信の無い人は特に気をつけたい。

かなり緑が豊かな山の奥地まで歩く。ここを越えるとようやく坑道の入口がある。

奥に見えるのが大久保間歩の入口。静かな雰囲気が漂う。

間歩入口前の小屋で用意されたヘッドライト付きのヘルメットをベルトでしっかり装着し、長ぐつに履き替える。サイズ合わせもしっかり手伝ってくれる。

大久保間歩の入り口。ガイドの同伴なしで立ち入ることはできない。

内部は途中に照明設備はなく、ガイドさんの懐中電灯と見学者のヘッドライトが頼りである。

足元は水が数センチ程溜まっているところもあり、長ぐつでないと歩けない。

白く見えるのが銀鉱。暗い坑道内でも白く光るのが確認できる。

鉱脈に沿って坑道から垂直に細長く上方に向かって、人1人が通れるくらいに掘り進めた跡があった。

石見銀山は水に悩まされたため、水を抜くためだけに掘った穴もある。抜けきれない水が溜まって、池のようになっているところもあった。

ここは大規模な採掘場所で、かなり広く掘られた跡があった。

ここがツアーで行ける終点の福石場。2017年の7月に初めて公開された。

これ以上進むと空気が薄くなり、危険ということだった。江戸時代もこの先までは空気の関係で堀り進まなかったそうである。

金生坑へと繋がる深い穴。ここに採掘した鉱石を落として下流で拾った。

ツアーの最後に、坑道の中で見学者全員のヘッドライトを消す時間があった。そこで、巻貝からつくったろうそく、「蝸灯」をつけて掘り手たちが実際に使用したあかりを再現し当時の様子を疑似体験したが、ぼんやりとしたあかりで、ほとんど手元しか見えないような明るさであった。

大久保間歩は、一般公開されている龍源寺間歩とはまた違った驚きや体験ができるので、石見銀山に行く際には、催行日に注意して大久保間歩ツアーを予約し、龍源寺間歩と両方を見学されることをお勧めする。

 

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